不動産小口化商品は、不動産を小口に分割して複数の投資家が共同保有できる仕組みを持つ金融商品で、相続税評価額を時価より低く抑えられる点から相続対策として活用されてきました。
ただし、令和8年度税制改正により、この評価方法は「通常の取引価額(ほぼ時価)」による評価へと変更される方向で、令和7年12月に税制改正大綱が公表されています。
改正後は、現行制度のような大幅な評価圧縮は難しくなりますが、路線価評価を用いた通常の不動産の節税効果が完全になくなるわけではありません。
不動産小口化商品が相続対策として注目される主な理由は、以下の3点です。
- 相続税評価額が購入価格(時価)を下回る評価方法が適用される(任意組合型の場合)
- 小口化により現金よりも評価を抑えた状態で資産を分割・承継できる
- 賃料収入を得ながら相続対策を並行して進められる構造
本改正は、こうした評価差を利用した節税スキームへの適正化を目的としており、大綱では「取得の時期に関わらず」通常の取引価額で評価すると明記されており、現行制度を前提とした対策設計の見直しが必要になります。
この記事では、不動産小口化商品が相続対策として機能する仕組み、令和8年度税制改正の具体的な変更内容、改正前後での節税効果の変化、そして実際に活用すべき人の条件と進め方を解説します。
不動産小口化商品とは:相続対策に使われる仕組みの基本

不動産小口化商品は、一棟マンションや商業ビルなどの不動産を小口に分割し、複数の投資家が共同で保有する仕組みです。
相続対策として注目される主な理由は、現金や有価証券に比べて相続税評価額が低くなるケースがある点にあります。
- 不動産小口化商品には「任意組合型」「匿名組合型」など複数の種類がある
- 相続対策として機能するのは主に「任意組合型」であり、種類によって評価方法が異なる
- 不動産特有の路線価評価・借地権割合・借家権割合が評価圧縮の根拠になる
- J-REITや匿名組合型は相続税評価の圧縮効果が任意組合型とは大きく異なる
相続税の負担を検討している資産家や、現金・預金の割合が高い方にとって、この仕組みの基本を理解することは判断の出発点になります。
以下では、商品の仕組みと種類、任意組合型が選ばれる理由、他の投資商品との評価方法の違いを順に解説します。
不動産小口化商品の仕組みと主な種類
不動産小口化商品は、1口あたり数十万円から数百万円程度の単位で、不動産の共有持分や組合の出資持分を取得できる商品です。
一棟不動産をそのまま購入するには数億円規模の資金が必要になるケースも多いですが、小口化することで比較的少額から不動産に関わる権利を持てる仕組みになっています。
主な種類は以下の3つに分類されます。
- 任意組合型:投資家が組合員として不動産の持分を共有し、実質的に不動産を「所有」する形態
- 匿名組合型:投資家が事業者に出資し、事業者が不動産を所有・運営する形態。投資家は出資者の立場
- 賃貸型(信託型含む):信託受益権や賃貸借契約を通じて収益を受け取る形態
この3種類の中で、相続対策として実務上よく活用されるのは任意組合型です。
投資家が不動産の持分を直接保有する形になるため、相続税の評価において「不動産としての評価方法」が適用される点が理由です。
匿名組合型や賃貸型では、投資家の手元にあるのは「出資金の返還請求権」や「金銭債権」に近い権利であり、評価方法が異なります。
任意組合型が相続対策に使われる理由
任意組合型が相続対策として機能する核心は、相続税評価額と実際の市場価格の間に生じる「評価差」にあります。
投資家は組合を通じて不動産の共有持分を実質的に保有するため、相続発生時には不動産と同じ評価方法が適用されます。
具体的には、以下の評価減が重なることで評価額が圧縮されます。
- 土地部分:路線価(公示地価のおよそ8割前後が目安)で評価される
- 貸家建付地として評価:借地権割合・借家権割合・賃貸割合に応じてさらに評価が下がる
- 建物部分:固定資産税評価額(市場価格より低い水準)で評価され、借家権割合分がさらに控除される
国税庁が公表している財産評価基本通達に基づくこれらの評価方法が、任意組合型の不動産小口化商品にもそのまま適用されます。
その結果、同じ金額を現金で保有するよりも相続税評価額が低くなるケースが生まれ、相続税の圧縮効果が期待できます。
たとえば、1億円の現金をそのまま保有している場合、相続税評価額は1億円のままです。
一方、同額を都市部の賃貸物件に投資した任意組合型商品に替えた場合、路線価評価・貸家建付地評価・建物の借家権控除が重なり、相続税評価額が市場価格の5割から7割程度の水準になるケースも見られます(物件の立地・賃貸状況・借地権割合によって異なります)。
この評価差が、相続税額の圧縮につながる仕組みです。
令和8年度税制改正については、令和7年12月19日に公表された与党税制改正大綱において、不動産小口化商品の評価を「通常の取引価額に相当する金額(ほぼ時価)」とする方針が示されています。
大綱では「取得の時期に関わらず」と明記されており、改正前に取得した商品であっても、令和9年1月1日以後の相続・贈与には新しい評価ルールが適用されることになります。
現行制度の評価圧縮を前提とした対策を検討している場合は、令和8年12月31日までに贈与を完了させることが選択肢の一つとなりますが、具体的な判断は税理士と相談しながら進めることが現実的な対応です。
匿名組合型・J-REITとの相続税評価の違い
任意組合型と混同されやすい商品として、匿名組合型とJ-REITがあります。
いずれも不動産を活用した投資商品ですが、相続税評価の観点からは大きく異なります。
匿名組合型の場合
匿名組合型では、投資家は不動産を直接保有しているわけではなく、事業者(営業者)に対する出資者の立場に留まります。
相続が発生した場合、投資家の手元にある権利は「出資金の返還を受ける権利」に近い性格を持ち、相続税の評価は原則として出資額や解約返戻金相当額をベースに評価されます。
不動産固有の路線価評価や借家権控除は適用されないため、現金に近い評価になりやすい構造です。
J-REITの場合
J-REIT(不動産投資信託)は証券取引所に上場しており、相続発生時には上場株式と同様に「相続開始日の終値」など市場価格をベースに評価されます。
市場価格そのものが評価額になるため、評価圧縮の余地はほとんどありません。
流動性が高い反面、相続税評価の観点では現金と大きな差が生じにくい商品です。
評価方法の比較まとめ
| 商品種別 | 相続税評価の基準 | 評価圧縮の可否 | 流動性 |
|---|---|---|---|
| 任意組合型 | 路線価・固定資産税評価額(不動産評価)※令和9年1月1日以後の相続・贈与からは通常の取引価額に変更予定 | 現行は圧縮効果が生じやすい(物件次第)/改正後は大幅縮小見込み | 低い(中途換金が難しい場合が多い) |
| 匿名組合型 | 出資額・解約返戻金相当額 | 圧縮効果は限定的 | 商品による |
| J-REIT | 上場時の市場価格 | 圧縮効果はほぼない | 高い(市場で売買可能) |
この違いを理解すると、なぜ相続対策の文脈で「任意組合型」が特に取り上げられるのかが明確になります。
一方で、任意組合型は流動性の低さや元本保証のなさといった特性もあるため、相続税評価の圧縮効果だけでなく、資産全体のバランスや保有期間の見通しも踏まえて検討することが重要です。
商品を選ぶ際には、種類の違いと評価方法の違いをセットで確認することが判断の基本になります。
不動産小口化商品の基本的な仕組みと、相続対策に使われる理由が整理できたところで、次は「なぜ評価額が下がるのか」をより詳しく掘り下げます。
次のセクションでは、路線価評価・借地権割合・借家権割合がどのように組み合わさって節税効果を生むのか、段階的に解説します。
相続税評価額が下がる仕組み:節税になる理由を段階的に解説

不動産小口化商品が相続対策として注目される主な理由は、現金や株式とは異なる「評価方法の仕組み」にあります。
- 路線価方式により、時価よりも低い評価額が適用される
- 貸家・貸家建付地の評価ルールで、さらに評価額が圧縮される
- 小規模宅地等の特例が適用されるケースでは、追加の評価減が見込める
- 現行制度下では、これら3段階の圧縮が重なることで評価額が下がる
特定の条件を満たした場合、時価の数分の一程度まで評価額が下がるケースもあります。
ただし、これは「任意組合型の不動産小口化商品」かつ「小規模宅地等の特例が適用される」かつ「賃貸割合が高い都市部物件」といった複数の条件が重なった場合の試算であり、すべての商品・状況に当てはまるわけではありません。
路線価方式による評価額の圧縮
不動産の相続税評価額は、時価(実勢価格)ではなく、国税庁が公表する「路線価」をもとに計算されます。
一般的に、路線価は時価の8割前後を目安として設定されていると言われており、これだけで現金に比べて評価額が低くなる効果があります。
不動産小口化商品の多くは都市部の収益不動産を対象としており、路線価評価の恩恵を受けやすい構造になっています。
特に都心の商業地や駅近のマンション・オフィスビルなどは、時価と路線価の乖離が相対的に大きくなりやすいとされています。
路線価と時価の乖離率を事前に確認することが、評価圧縮効果を見極めるうえで重要な視点になります。
具体的な計算の流れは次のとおりです。
- 土地の評価:路線価 × 地積(面積)× 各種補正率
- 建物の評価:固定資産税評価額をそのまま適用
固定資産税評価額も一般的に時価の7割前後が目安とされており(総務省の固定資産評価基準に基づく設定)、土地・建物のいずれも時価より低い評価額が出発点になります。
つまり、不動産小口化商品に出資した時点で、同額の現金を保有するよりも相続税の課税対象額が小さくなる構造が生まれます。
なお、路線価は毎年1月1日時点の地価をもとに国税庁が公表するものであり、実際の取引価格(時価)とは乖離が生じることがあります。
この乖離が大きいほど、評価圧縮の効果は高くなる傾向があります。
貸家・貸家建付地評価による追加の評価減
路線価評価による圧縮に加え、賃貸物件として運用されている不動産にはさらに評価減が適用されます。
これが「貸家評価」および「貸家建付地評価」と呼ばれるルールです。
賃貸用途の不動産には、以下の2つの評価減が重なります。
- 建物(貸家):固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
- 土地(貸家建付地):路線価評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
借家権割合は全国一律30%、借地権割合は地域によって異なりますが、都市部では60〜70%程度に設定されているケースが多いです(国税庁の財産評価基本通達に基づく)。
賃貸割合が100%(満室)の場合、建物評価は固定資産税評価額の7割程度、土地評価は路線価の8割前後からさらに18〜21%程度の評価減が加わる計算になります。
不動産小口化商品では、プロが管理する収益物件が対象となるため、賃貸割合が高い状態が維持されやすく、この評価減が安定的に機能しやすい点が特徴です。
小規模宅地等の特例が適用されるケース
小規模宅地等の特例は、一定の条件を満たす土地について、相続税評価額をさらに減額できる制度です。
不動産小口化商品においても、この特例が適用されるケースがあります。
適用される場合、貸付事業用宅地等として200㎡を上限に、評価額の50%を減額できます。
ただし、この特例の適用には複数の条件があります。
- 被相続人または生計一親族が貸付事業に使用していた土地であること
- 相続人が申告期限まで引き続き貸付事業を継続していること
- 相続開始前3年以内に新たに貸付事業に供した土地は原則として対象外(ただし一定の例外あり)
不動産小口化商品の場合、商品の形式によって適用可否の方向性が異なります。
任意組合型は組合員が不動産を直接共有する形式であるため、現物不動産と同様の扱いとして特例が適用されやすいとされています。
一方、信託型(匿名組合型など)は受益権の保有にとどまるため、原則として特例の適用対象外となるケースが多いとされています。
ただし、商品の具体的な設計や持分の内容によって判断が異なるため、実際に特例を適用できるかどうかは税理士への個別確認が必要です。
また、令和3年度税制改正以降、この特例の適用要件は段階的に厳格化されており、「3年縛り」と呼ばれるルールが設けられています。
令和8年度税制改正では、この流れをさらに進める形での見直しが検討されており、適用要件がより厳しくなる可能性があります。
相続が発生する前に取得した物件かどうかが、適用可否の重要な判断軸になります。
現行制度での評価圧縮率の目安
3段階の評価減が重なった場合の圧縮率の目安(一般的な試算):
- 路線価評価により、時価の8割前後が出発点になる
- 貸家建付地・貸家評価により、そこからさらに15〜20%程度の評価減
- 小規模宅地等の特例が適用される場合、さらに50%の評価減
これらが重なると、時価に対して最終的な評価額が30〜40%程度まで圧縮されるケースがあると言われています。
ただし、これはあくまで試算の目安であり、物件の所在地・構造・賃貸状況・持分割合・相続人の状況によって実際の数値は大きく異なります。
また、この圧縮効果が大きいほど、税務当局から評価の見直しを受けるリスクが高まる可能性があります。
国税庁が公表した財産評価基本通達6条(いわゆる「総則6項」)の適用事例では、不動産を活用した相続税評価の圧縮が否認された判例も存在します。
否認リスクが高まりやすい傾向として、以下のようなケースが挙げられます。
- 相続直前の短期取得
- 時価との乖離率が極めて大きい物件
- 複数物件を組み合わせた高額圧縮
こうした状況に当てはまる場合は、特に慎重な設計が求められます。
現行制度での評価圧縮の仕組みを理解したうえで、次に確認すべきは「令和8年度税制改正でこの仕組みがどう変わるか」です。
改正の内容と影響範囲を次のセクションで詳しく解説します。
令和8年度税制改正で不動産小口化商品の評価方法はどう変わるか

令和8年度税制改正は、不動産小口化商品の相続対策としての活用に直接影響を与える内容です。
- 評価額の算出方法が「路線価方式」から「通常の取引価額(ほぼ時価)」に変更されることが、令和7年12月19日公表の与党税制改正大綱で示されました
- 適用対象は任意組合型・匿名組合型を含む不動産小口化商品全般とされています
- 適用は令和9年1月1日以後に相続または贈与により取得する財産から開始されます
- 大綱では「取得の時期に関わらず」と明記されており、改正後は現行制度のような大幅な評価圧縮は期待しにくくなります
この改正内容を正確に理解しておくことは、今後の相続対策を設計するうえで欠かせない前提知識です。
以下では、改正の背景・変更点・適用範囲・適用時期の順に整理します。
改正の背景:国税庁が問題視した評価かい離
国税庁が問題視したのは、不動産小口化商品の「相続税評価額」と「実際の取引価格」の間に生じていた大きなかい離です。
この乖離が、意図的な節税スキームとして利用されているという実態が背景にあります。
不動産小口化商品の多くは、現行制度では路線価や固定資産税評価額をもとに相続税評価額が算出されます。
路線価は一般的に時価の8割前後を目安に設定されており、さらに賃貸物件であれば借地権割合・借家権割合による控除も適用されます。
結果として、相続税評価額が実勢価格の3割から5割程度にまで圧縮されるケースも生じていました。
国税庁が公表している「財産評価基本通達の見直しに関する情報」では、こうした評価かい離が著しい場合に時価課税を行う根拠として「総則6項」の適用事例が示されています。
令和4年以降、最高裁判決でもこの方向性が支持されており、制度的な対応が求められる状況になっていました。
改正の本質は、「節税目的で設計された商品に対して、実態に即した評価(通常の取引価額)を適用する」という方針の制度化です。
評価方法の変更点:路線価方式から通常の取引価額へ
改正後は、不動産小口化商品の相続税評価額が「通常の取引価額に相当する金額」、すなわちほぼ時価で評価される内容に変更されます。
令和7年12月19日公表の与党税制改正大綱では、「小口化された貸付用不動産については、その取得の時期に関わらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する」と明記されています。
- 現行:路線価・固定資産税評価額をベースに評価額を算出し、賃貸物件であれば借地権・借家権割合を控除
- 改正後:通常の取引価額(ほぼ時価)に基づいた評価額が適用される
この変更によって、現行制度で生じていた「評価額が時価の半額以下になる」ケースは大幅に減少すると見られています。
路線価方式が完全に廃止されるわけではなく、通常の不動産(小口化されていないもの)については引き続き路線価評価が適用されます。
評価方法の詳細な計算方式については、令和8年度税制改正の成立後に国税庁から公表される通達・ガイドラインで確認することが必要です。
改正の適用対象となる商品・取引の範囲
令和8年度税制改正大綱によると、適用対象は不動産特定共同事業契約または信託受益権に係る金融商品取引契約による不動産小口化商品とされています。
- 不動産特定共同事業契約に基づく任意組合型・匿名組合型の不動産小口化商品
- 信託受益権に係る金融商品取引契約による不動産小口化商品
- 令和9年1月1日以後に相続・贈与により取得するもの(取得時期に関わらず)
なお、任意組合型と匿名組合型はいずれも不動産小口化商品の主な契約形態ですが、相続対策として一般的に活用されてきたのは任意組合型です。
任意組合型は出資者が不動産の持分を直接保有する形式のため、現行では路線価評価が適用されやすいという特徴がありますが、改正後はいずれも通常の取引価額での評価となる見込みです。
一方で、以下のようなケースは適用対象外となる可能性があります。
- 通常の不動産(小口化されていない現物不動産)の路線価評価
- 証券取引所に上場するJ-REIT(市場価格で評価される仕組みが維持される)
適用時期と経過措置の内容
令和7年12月19日に公表された与党税制改正大綱によると、改正の適用は令和9年(2027年)1月1日以後に相続または贈与により取得する財産から開始されます。
この適用時期から、令和8年(2026年)12月31日までに贈与を完了させた場合は、現行の路線価方式による評価が適用される可能性があります。
経過措置については、大綱の段階では「取得の時期に関わらず」と明記されており、改正前に購入・取得した不動産小口化商品であっても、令和9年1月1日以後の相続・贈与には新しい評価ルールが適用される見込みです。
- 令和8年中に贈与が確定した場合:現行の評価方法が適用される可能性がある
- 令和8年中に購入しても相続発生が令和9年1月1日以後の場合:改正後の評価ルールが適用される見込み
- 改正前に取得した商品であっても:「取得時期に関わらず」という大綱の方針により、令和9年以降の相続・贈与には新ルールが適用される
「令和8年中に購入すれば旧評価方式が維持される」という前提は、現時点で大綱が示している内容とは異なります。改正前に購入した場合でも、相続発生が令和9年以降であれば新ルールが適用される点に注意が必要です。
現行制度での評価圧縮を目的とした贈与を検討するのであれば、令和8年12月31日までに贈与を完了させることが一つの目安となります。ただし、適用の詳細は改正法の成立・施行後に公表される通達で確認することが必要です。
改正の内容と適用範囲が整理できたところで、次に気になるのは「改正前と改正後で節税効果はどれくらい変わるのか、そして今から動いて間に合うのか」という点です。
次のセクションでは、具体的な節税効果の変化と行動の判断軸を解説します。
改正前後での節税効果の変化と、今から動いて間に合うか

令和8年度税制改正によって、不動産小口化商品の相続対策としての効果がどの程度変わるのかは、多くの方が確認しておきたいポイントです。
この改正は、国税庁が従来の財産評価基本通達による路線価評価を見直す方向で検討しているものです。
背景には、不動産の相続税評価額が時価と大きくかい離するケースが増加し、節税目的での不動産小口化商品の購入が社会問題化したことがあります。
令和7年12月19日公表の大綱では、不動産小口化商品の評価を「通常の取引価額(ほぼ時価)」とすることが示されており、現行制度のような評価圧縮は令和9年1月1日以後の相続・贈与では適用されなくなります。
- 改正前は評価額を時価の30〜40%前後まで圧縮できるケースがあった
- 改正後は通常の取引価額(ほぼ時価)での評価となるため、現行ほどの圧縮効果は期待できなくなる
- 路線価評価が適用される通常の不動産については、引き続き一定の節税効果が継続する
- 令和8年12月31日までに贈与を完了させることで、現行ルールの適用を受けられる可能性がある
相続税対策を検討している方にとって、「今すぐ動くべきか」「改正後でも意味があるか」は判断の重要な軸です。
このセクションでは、改正前後の評価額の変化を数値例で示しながら、残存する節税効果と、今動くことが有利になるケースを整理します。
改正前後の評価額の変化(数値例)
現行制度では、不動産小口化商品の相続税評価額は、時価の2割〜4割程度まで圧縮できるケースがあります。
改正後は通常の取引価額(ほぼ時価)での評価となるため、この圧縮幅は大幅に縮小します。
ここでは、仮に1,000万円分の不動産小口化商品を保有した場合を例に考えます。
- 改正前:評価額が時価の約30〜40%となるケースでは、300万〜400万円程度に圧縮される
- 改正後:通常の取引価額(ほぼ時価100%相当)での評価となるため、評価額は取得価額に近い水準になる見込み
この差は、相続税率が高い課税層ほど税額に直接影響します。
たとえば相続税の限界税率が30%前後の場合、評価額の圧縮幅が600万円縮小すれば、それだけで180万円前後の税負担増につながる計算です。
改正後も継続して使える節税効果
改正後も、不動産小口化商品が相続対策として完全に無効化されるわけではありません。通常の不動産については路線価・固定資産税評価額を基礎とする評価方式が残るため、現金や有価証券と比較すれば一定の評価圧縮は引き続き機能します。ただし、不動産小口化商品そのものについては改正後の評価方法が適用されるため、現行制度と同水準の効果は期待できません。
改正後も残ると考えられる節税効果は、主に以下の点です。
- 小規模宅地等の特例が適用される場合の評価減(要件充足が前提)
- 不動産小口化商品の分割しやすさを活かした遺産分割の円滑化
- 現金・預金と比べた資産分散としての活用価値
また、不動産小口化商品は分割しやすいという特性から、法定相続分に近い形で遺産を分配しやすく、遺産分割に関するトラブル軽減という観点でも引き続き活用できます。
節税効果の縮小を踏まえたうえで、分散・分割のしやすさを目的に組み込む場合は、改正後も活用価値が残ります。
令和8年中の贈与・購入が有利になるケース
令和8年度税制改正大綱の適用時期は「令和9年1月1日以後に相続または贈与により取得する財産」とされているため、令和8年12月31日までに贈与が確定した場合は現行の評価ルールが適用される可能性があります。
一方、令和8年中に購入しても相続発生が令和9年1月1日以後であれば、改正後のルールが適用される点に注意が必要です。「購入時期」ではなく「相続・贈与の発生時期」が適用ルールの分岐点となります。
現時点で有利になる可能性が高いケースは、以下のとおりです。
- 相続時精算課税制度を使った贈与を令和8年12月31日までに完了させる場合
- 暦年贈与として令和8年中に贈与を確定させる場合
相続時精算課税制度と暦年贈与はどちらも不動産小口化商品の贈与に活用できますが、性質が異なります。
相続時精算課税制度は一定額までの贈与税を非課税にできる一方、相続時に贈与財産が相続財産に加算される点が特徴です。
暦年贈与は毎年一定額を非課税で贈与できる制度で、長期的に少額ずつ移転したい場合に向いています。
不動産小口化商品は小口に分けられるため暦年贈与との相性がよいとされますが、どちらが有利かは相続財産の総額や相続人の人数によって異なります。
「改正前に動くべきかどうか」は、保有財産の総額・相続人の人数・現在の相続税評価額の構成によって結論が変わります。
目安として、相続財産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を大きく上回る場合や、相続人が少なく一人あたりの課税額が大きくなりやすい場合は、節税効果の変化が税負担に与える影響が相対的に大きくなります。
税理士や不動産の専門家への相談を活用し、自分の状況に即した判断材料を揃えることをおすすめします。
不動産小口化商品を相続対策に使う際のリスクと注意点

不動産小口化商品は相続対策として活用されてきましたが、仕組みを正しく理解したうえで購入することが重要です。
- 市場流通性がなく、急な換金が難しい
- 令和8年度の税制改正で節税効果が縮小する
- 相続が発生してからでは対策として機能しない
- 事業者・商品の選び方によって結果が大きく変わる
メリットだけでなくリスクを把握しておくことは、適切な判断をするうえで重要です。
以下では、4つの観点からリスクと注意点を整理します。
流動性の低さと換金時のリスク
不動産小口化商品は、株式や投資信託のように市場で自由に売買できる商品ではありません。
換金が必要になっても、すぐに現金化できない可能性があることを前提に検討する必要があります。
多くの商品は、運用期間中の中途解約を原則として認めていません。
事業者によっては買取制度を設けているケースもありますが、時価よりも低い価格での買取となる場合があり、購入時に期待していたリターンを下回る結果になることもあります。
また、事業者が倒産した場合には、換金そのものが困難になるリスクも否定できません。
相続対策を目的として購入する場合、「いつ相続が発生するかわからない」という性質上、運用期間中に相続が起きるケースも十分に想定されます。
相続人が複数いる場合、持分の取り扱いをめぐってトラブルになる可能性もあります。
税制改正による節税効果縮小のリスク
令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日公表)では、不動産小口化商品の相続税評価が「通常の取引価額(ほぼ時価)」による評価に変更される方針が示されています。
これは現行制度を前提に商品を購入した方にとって、想定していた節税額が得られなくなる可能性を意味します。
現行制度では、路線価や固定資産税評価額をもとに評価されるため、時価との乖離が大きく、相続税評価額を大幅に圧縮できる点が特徴でした。
しかし改正後は評価額が通常の取引価額(ほぼ時価)に近い水準となるため、現行制度で得られていた評価額の圧縮効果は大幅に縮小します。
大綱では「取得の時期に関わらず」と明記されているため、改正前に購入した商品であっても、令和9年1月1日以後の相続・贈与には新しい評価ルールが適用されることになります。
- 相続対策の必要性が明確で、流動性リスクを許容できる場合 → 令和8年12月31日までに贈与を完了させることを視野に、専門家へ相談を始めることに一定の合理性がある
- 相続発生まで時間的余裕があり、資産状況の整理も途中の段階 → 改正法の詳細が確定してから改めて検討することも現実的な選択肢
「今すぐ購入すれば確実に節税できる」という前提で動くことは避け、税理士などの専門家に現在の状況を確認したうえで判断することをおすすめします。
相続発生後からでは使えない点
不動産小口化商品による相続対策は、被相続人が生前に購入・保有していることが前提です。
相続が発生した後から対策として活用することはできません。
相続税の節税効果が生まれるのは、被相続人が所有している財産の評価額が圧縮されるからです。
相続発生後に相続人が購入しても、すでに確定した相続財産の評価には影響しません。
また、購入から相続発生までの期間が極端に短い場合、税務当局から「租税回避目的」とみなされ、評価の否認リスクが高まる可能性もあります。
実際に、国税庁が公表している「財産評価基本通達の総則6項」に基づく否認事例では、相続直前の不動産取得が問題視されたケースが複数確認されています。
税務実務では一般的に数年単位の保有期間が望ましいとされることが多く、数ヶ月程度の短期保有では対策としての実効性が認められにくいと考えられています。
事業者・商品選びで確認すべきポイント
不動産小口化商品は、事業者や商品の内容によって品質・リスクが大きく異なります。
節税効果だけに着目して選ぶと、運用面や出口面で想定外の損失を被る可能性があります。
- 事業者の財務健全性・運用実績・不動産管理体制
- 運用期間・中途換金の条件・買取制度の有無
- 対象不動産の立地・稼働状況・賃料の安定性
各項目を確認する際の具体的な手順としては、まず事業者のウェブサイトや投資家向け資料で過去の運用実績・分配金の実績を確認し、次に不動産特定共同事業法に基づく許可番号を国土交通省または都道府県の公開情報で照合することが出発点となります。
運用期間や中途換金の条件は目論見書や契約概要に記載されているため、複数商品を比較する際には同じ項目を横並びで確認すると判断しやすくなります。
不動産小口化商品は不動産特定共同事業法に基づく許可を受けた事業者のみが取り扱えますが、許可を受けていることと商品の優良性は別の話です。
事業者が倒産した場合の対応、分別管理の状況なども確認しておくと安心です。
節税目的で購入した商品であっても、運用中の収益が著しく低ければトータルの経済合理性は下がります。
税務・財務の両面から評価できる専門家のアドバイスを受けながら選定することが、リスクを抑えるうえで現実的な方法です。
なお、相続専門の税理士や、不動産特定共同事業に詳しいファイナンシャルプランナーに相談することが、専門家を探す際の一つの目安となります。
リスクと注意点を整理したうえで、次に気になるのは「自分の状況では本当に向いているのか」という点ではないでしょうか。
次のセクションでは、不動産小口化商品が相続対策として有効な人・そうでない人を具体的に比較します。
不動産小口化商品が相続対策として有効な人・そうでない人

不動産小口化商品は、すべての人に等しく効果をもたらすわけではありません。
資産規模・家族構成・他の相続対策との組み合わせによって、効果の出やすさは大きく変わります。
- 相続税の課税対象となる資産が一定規模以上ある人ほど、評価額圧縮の恩恵を受けやすい(ただし改正後は縮小)
- 複数の相続人に公平に分けたい場合、小口化商品の分割しやすさが活きる
- 現物不動産や生命保険など他の手段と比較すると、流動性・管理コスト・税効果の性質が異なる
- 令和8年度税制改正の影響を考慮すると、活用の優先順位は個人の状況によって変わる
この商品が「自分に合っているかどうか」を判断するには、資産規模・家族状況・他の対策との組み合わせという三つの軸で整理することが有効です。
以下では、それぞれの観点から具体的な判断材料を示します。
相続対策として効果が出やすい資産規模・家族状況の目安
相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える課税遺産がある場合、不動産小口化商品による評価額圧縮は実質的な節税効果につながります(現行制度の範囲内で)。
逆に、基礎控除の範囲内に収まる資産規模では、評価額を下げても課税額への影響はほとんどありません。
目安として、相続財産が数千万円以上の規模(特に現金・預貯金・有価証券の比率が高い場合)から、不動産小口化商品の活用が検討に値するとされることが多いです。
基礎控除をわずかに超える程度の資産規模では、投資コストや流動性の制約を考慮すると、他の手段のほうが適している場合もあります。
- 相続税の課税対象となる遺産総額が基礎控除を上回っている
- 現金・預貯金の比率が高く、評価額を下げられる資産が少ない
- 相続人が複数おり、遺産分割の円滑化が課題になっている
- 現物不動産を持っていないか、管理の手間を避けたい
特に現金や有価証券の比率が高い資産構成の方にとっては、不動産小口化商品への組み換えによって相続税評価額を一定程度引き下げられる点が有効に働きます(令和8年12月31日までに贈与を完了させる場合は現行ルール適用の可能性あり)。
不動産小口化商品(任意組合型)は、現物不動産と同様に路線価をもとにした評価が適用されるため、現行制度では時価よりも低い評価額となるケースがあります。
現物不動産を所有している場合と比べて管理の手間が少ない点も、高齢の資産保有者や遠方に住む相続人がいる家庭には実務的なメリットになります。
一方、相続人が一人だけの場合や、すでに現物不動産を複数保有して評価圧縮効果を十分に享受している場合は、不動産小口化商品を追加する優先度は相対的に下がります。
令和8年度税制改正では、評価額の圧縮率が大幅に縮小する方向で大綱が示されています。
これは制度の廃止ではなく、不動産小口化商品に対する特有の評価圧縮効果がなくなるという変更であり、通常の不動産については路線価評価が引き続き適用されます。
現物不動産・生命保険など他の相続対策手段との比較
不動産小口化商品は、他の相続対策手段と比べて何が異なるのかを理解しておくことが、適切な判断につながります。
代替手段には一長一短があり、どれが「最善」かは個人の状況によって異なります。
| 手段 | 評価圧縮効果 | 分割のしやすさ | 管理の手間 | 流動性 | 制度改正リスク |
|---|---|---|---|---|---|
| 現物不動産 | 高い場合あり | 難しい | 大きい | 低い | 中程度 |
| 生命保険(死亡保険金) | なし(非課税枠) | しやすい | ほぼなし | 低い | 低い |
| 暦年贈与・教育資金贈与 | 間接的 | しやすい | 小さい | 高い | あり |
| 不動産小口化商品 | 現行は中程度・改正後は大幅縮小 | しやすい | ほぼなし | 原則として中途換金が難しい商品が多い | あり(令和9年1月1日から改正適用) |
現物不動産との比較のポイント
現物不動産は、土地の路線価評価や小規模宅地等の特例を活用することで、評価額を下げられるケースがあります。
ただし、物件の選定・管理・将来的な売却まで、オーナーとしての責任を負う必要があります。
不動産小口化商品は、こうした管理負担を省きながら不動産としての評価方式を活用できる点で、管理に関わりたくない層には一つの選択肢です。ただし令和9年以降は評価方法が変わるため、この点を踏まえた検討が必要です。
現物不動産については路線価評価が引き続き適用される見込みであり、改正後は現物不動産との相対的な差が縮まる点にも注意が必要です。
生命保険との組み合わせのポイント
生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人数)は、加入時の健康状態を満たしていれば確実に使える制度です。
不動産小口化商品と生命保険は、目的が異なる補完的な関係にあります。
生命保険は「一定額を確実に非課税で渡す」手段であり、不動産小口化商品は「資産全体の評価額を下げる(現行制度下)」手段です。
どちらか一方で完結させるより、両方を組み合わせることで対策の厚みが増します。
次のセクションでは、こうした判断を踏まえたうえで、実際に不動産小口化商品を相続対策として検討する際の具体的な進め方を解説します。
不動産小口化商品の相続対策を検討する際の進め方

この記事で解説してきた仕組みと税制改正の影響を踏まえ、次に必要なのは「自分の状況に当てはめて判断する」ステップです。
- 相続税の課税見込み額と保有資産の構成を整理する
- 税理士への相談前に準備すべき情報をリストアップする
- 生前贈与との組み合わせも視野に入れたうえでスケジュールを組む
不動産小口化商品は、すべての人に同じ効果をもたらすわけではありません。
現在の資産構成・相続人の人数・タイムラインによって、有効性は大きく異なります。
令和8年度税制改正大綱が令和7年12月19日に公表されており、令和9年1月1日からの適用が示されています。現行制度を前提とした対策を検討する場合は、令和8年12月31日までの贈与完了を念頭に、早めに専門家へ相談することが重要です。
以下では、検討を進める上での実務的な手順を整理します。
まず確認すべき3つのこと(相続税の課税見込み・保有資産の構成・タイムライン)
相続対策として不動産小口化商品が有効かどうかは、3つの前提条件を確認しないと判断できません。この3点を整理するだけで、専門家への相談が格段にスムーズになります。
- 相続税の課税見込み額がある程度の水準に達しているか
- 現金・有価証券・不動産の構成比率がどうなっているか
- 対策を実行できる時間的余裕がどの程度あるか
①相続税の課税見込みについては、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える資産があるかどうかが最初のチェックポイントです。
課税対象になりそうな資産規模でなければ、不動産小口化商品による評価額圧縮の効果を活かす場面がそもそも限られます。
②保有資産の構成については、現金・預貯金の比率が高い場合は、不動産小口化商品への組み替えによって評価額を下げる余地があります(現行制度の範囲内で)。
不動産小口化商品(任意組合型)では、現行制度下では現金をそのまま相続した場合と比べて路線価をベースとした不動産評価が適用されるため、評価額が時価より低くなる仕組みが相続税対策として機能します。
一方で、すでに実物不動産を多く保有している場合は、流動性の観点から小口化商品との組み合わせ方を慎重に検討する必要があります。
③タイムラインについては、令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日公表)において、不動産小口化商品の評価を「通常の取引価額(ほぼ時価)」とする方針が令和9年1月1日からの適用として示されています。
現行制度の評価圧縮効果を活かすには令和8年12月31日までの贈与完了が一つの目安となります。被相続人の年齢・健康状態も含め、「何年以内に対策を完了させるか」を意識しておくことが求められます。
税理士に相談する前に準備しておく情報
相談前に情報を整理しておくことで、初回面談の質が上がり、具体的なアドバイスを受けやすくなります。
以下の情報を事前にまとめておきましょう。
- 保有資産の一覧(不動産の場合は所在地・固定資産税評価額・時価の概算)
- 預貯金・有価証券・生命保険の概算額
- 法定相続人の人数と続柄
- すでに行っている相続対策の内容(生前贈与の実績など)
- 相続対策に充てられる資金の目安額(流動資産のうち、当面使う予定のない金額の概算)
これらを手元に揃えた状態で相談に臨むと、税理士側も「どの手段が優先度が高いか」を判断しやすくなります。
特に不動産の評価額は、路線価や固定資産税評価額と時価の乖離が大きいケースもあるため、概算でも把握しておくと話が早くなります。
また、「不動産小口化商品を使いたい」という前提で相談に行くよりも、「相続税の負担を軽減したい。不動産小口化商品も選択肢の一つとして検討している」というスタンスで臨む方が、より中立的なアドバイスを引き出せます。
生前贈与との組み合わせを検討する場合の次のステップ
不動産小口化商品は、生前贈与と組み合わせることで相続対策としての効果を高められる場合があります。
現行制度では路線価評価で評価額が圧縮された状態の持分を贈与できるため、同じ贈与枠でより多くの資産を移転しやすくなる点が特徴です(令和8年12月31日までの贈与が対象)。
ただし、組み合わせる場合には手順と注意点を把握した上で進める必要があります。
生前贈与との組み合わせを検討する際の基本的な流れは以下のとおりです。
- 不動産小口化商品を取得し、低い評価額が確定した状態で贈与対象にする
- 暦年贈与(年間110万円の基礎控除)または相続時精算課税制度のいずれを使うかを決める
- 贈与のタイミングと金額を、相続開始前の加算ルール(現行7年)を踏まえてスケジューリングする
令和5年度税制改正により、暦年贈与の相続財産への加算期間が3年から7年へと延長されています。
これにより相続直前の贈与が節税効果を発揮しにくくなっているため、早期に贈与を開始することの重要性が増しています。
不動産小口化商品の評価圧縮効果と生前贈与を組み合わせる場合も、この加算ルールを前提に計画を立てる必要があります。
また、相続時精算課税制度を選択した場合は、年間110万円の基礎控除が設けられた一方で、贈与財産は相続時に精算されるという性質を持ちます。
どちらの制度が有利かは、資産規模・贈与額・相続人の状況によって異なるため、税理士との確認が不可欠です。
不動産小口化商品を相続対策として活用できるかどうかは、自分の資産状況と税制改正のタイムラインを照らし合わせて初めて判断できます。
現行制度を前提とした対策を検討するのであれば、改正の動向を早めに確認しておくことが現実的な対応といえます。
まずは現状の資産構成と課税見込みを整理し、相続対策の実績が豊富な税理士への相談を早めに検討することをお勧めします。
不動産小口化商品と相続対策に関するよくある質問

税制改正の動向や商品の種類によって、不動産小口化商品の相続対策としての効果は変わる場合があります。「今の使い方で本当に大丈夫か」「どのタイミングで動けばよいか」と迷われている方も多いのではないでしょうか。このセクションでは、相続税の評価や申告、特例の適用といった実務的な疑問にお答えします。正確な判断のための参考として、ぜひご活用ください。
令和8年度の税制改正後は、不動産小口化商品の相続税対策としての効果はなくなりますか?
改正後も、要件を満たす場合に適用できる小規模宅地等の特例や、遺産分割の円滑化といった観点での活用価値は引き続き残ります。
ただし、路線価方式を活用した評価圧縮については、不動産小口化商品に対しては改正後は適用されなくなる点に注意が必要です。
任意組合型と匿名組合型では相続税の扱いが違いますか?
任意組合型は、組合員が不動産を直接保有する形式とみなされるため、現行制度では相続税評価に路線価が適用されます。路線価評価は時価より低く算出されることが多く、相続税の圧縮効果が期待できる点が特徴です。
一方、匿名組合型は出資者が事業者に対する金銭債権を保有する形式と整理されるため、路線価ではなく額面に近い評価となり、相続税対策としての効果は限定的になります。
不動産小口化商品は相続が発生した後でも活用できますか?
相続が発生した後に不動産小口化商品を取得しても、すでに相続財産の評価は確定しているため、評価額の圧縮効果を得ることはできません。この商品が相続対策として機能するのは、被相続人が生前に取得し、相続時点で保有している場合に限られます。
相続対策は時間をかけて計画的に進めることが重要であり、早期に検討を始めるほど選択肢が広がります。相続発生後の活用を期待している場合は、目的に合った別の手段を専門家に相談されることをおすすめします。
令和8年中に贈与しておけば改正後も旧評価方法が適用されますか?
令和8年度税制改正大綱では、適用時期は「令和9年1月1日以後に相続または贈与により取得する財産」とされています。そのため、令和8年12月31日までに贈与が成立した場合は、現行の路線価方式による評価が使える可能性があります。
一方、令和8年中に購入しても相続発生が令和9年1月1日以後であれば、改正後のルールが適用される点に注意が必要です。「取得時期」ではなく「相続・贈与の発生時期」が適用ルールの分岐点となります。
小規模宅地等の特例は不動産小口化商品にも適用できますか?
不動産小口化商品への小規模宅地等の特例の適用は、商品の組成形態によって異なります。一般的に、任意組合型で組成された事業用不動産の場合、投資家が不動産を「共有持分」として保有しているとみなされるため、特例の適用対象となる可能性があります。一方、匿名組合型の商品は出資契約に基づく債権とみなされるため、同様の扱いにはならないことが多いです。
不動産小口化商品の相続税申告はどのように行いますか?
任意組合型の場合、相続財産は「不動産の持分」として扱われるため、保有する持分割合に応じた土地・建物の評価額を算出したうえで申告します。土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額をもとに評価するのが現行の一般的な流れです(令和9年1月1日以後の相続・贈与では通常の取引価額による評価に変更予定)。

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